ODA特別委員会の質疑録です。

参議院議員 牧山ひろえ ODA特別委員会 2009.7.1
ODA委員会 牧山ひろえ
○牧山ひろえ君

民主党の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。

 私は、昨年の夏、横浜で開催されましたTICADWにおいてアフリカ諸国の要人と会談を重ねまして、日本発祥の母子健康手帳をアフリカ諸国に普及させることができれば、例えばサブサハラ・アフリカでいまだに千人当たり百六十人を超える五歳未満死亡という悲惨な事態を改善できると主張し続けました。
 国会の場においては、昨年、二月二十七日の質問主意書を始め、三月二十七日の外交防衛委員会、二十八日のODA委員会、同じく六月六日のODA委員会で母子健康手帳のアフリカにおける必要性を強く提案いたしました。その結果、アフリカにおける母子保健の向上がTICADWの横浜宣言に盛り込まれ、国連のMDGsの目標を達成するための大きな前進となっております。
 しかしながら、残念なことに、私のアフリカにおける母子保健の向上に関する思いは現在進行形であって、いまだに実現するには至っておりません。ですが、今後も外務省、JICAの専門スタッフの皆さんと一体となって根気強くこの目標達成に向かっていきたい、そう考えております。  では、まずJICAの方にお伺いしたいと思います。
 JICAが展開している顔の見える支援として、母子保健の専門家が世界各地に展開して高い評価を得ているということです。例えばアフリカのどういった国でそうした国際的にも高い評価を得ている活動をJICAはされているんでしょうか。御報告ください。

○参考人(上田善久君) お答えいたします。
 先生御指摘の母子健康手帳を活用しましたJICAの母子保健事業につきましては、過去、インドネシアで九四年に地方の一都市で試行的に導入して以来、十年間の事業展開を経まして二〇〇四年に保健大臣令で制度化された、こういう実績を持っております。また、二〇〇五年からは、パレスチナの複雑な環境下におきましても同様の母子のケアシステム強化事業を実施しております。
 JICAは、こうしたアジアや中東での多様な社会環境の下での蓄積した成果、経験を生かしまして、TICADWでお約束したアフリカ母子保健支援にも取り組んでいますが、その具体例として、西アフリカ広域展開を視野に入れたセネガルでの取組を簡単に御紹介いたします。
 既に、二〇〇一年からセネガル保健人材育成の中心となる国立保健医療・社会開発学院に対しまして、施設整備支援や学校運営管理支援など、我が国の国立国際医療センターなどの専門家の協力を得ながら実施してまいりました。現在、この事業で育成されました現地の人材と一緒になりまして、母子健康指標が劣悪な東部州におきまして、母子手帳制度の前提となります医療施設整備、医療従事者の技術や意識の向上、それを支える行政制度改善などのいわゆる保健システム強化事業を、経験豊かな医師、助産師、看護師等々の医療専門家、さらにコミュニティー開発専門家、その他青年海外協力隊員などが一丸となりまして、現地JICA事務所とともに遂行しているところでございます。JICAはこうした活動を通じて得たノウハウを、先ほど述べましたセネガルの国立学院への周辺諸国からの保健人材受入れを通じまして、広く普及させるべく努力しております。
 なお、これと併せまして、西アフリカで広域展開中のコミュニティー参加による小学校教育の拡充、教員能力強化を通じた理数科教育の普及といった教育分野での事業を通じまして、表の読み取り能力などを含む広い意味での識字率の向上を目指すことにより、母子手帳がより効果的に活用される環境づくりを行っているところでございます。

○牧山ひろえ君

ありがとうございます。今お伺いしましたお話では、それではセネガルの一部地域ですばらしい日本の支援がなされているということが分かりました。  さて、私は、たとえ母子手帳が現地の宗教と言語に合わせた内容であっても、保健衛生に携わるスタッフ、そして電気、水道などの母子保健の向上を図るための社会的なインフラが最低限そろっていなければ母子手帳の有効性を発揮できないと思います。ですが、社会的なインフラがある程度そろっている国、地域をパイロットモデルにして母子手帳を普及させれば、妊産婦死亡率の改善につながり、周辺の国や地域から私たちも欲しいということになると思うのです。  そうした観点から、今おっしゃっておられたセネガルなど、インフラが整いつつあるところにおいて、母子保健向上のツールとして母子手帳を普及させていくべきであると考えますが、外務大臣はいかがでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君)

母子健康手帳は、健康一般についての母親の知識を高めて、また、医療従事者側で母子の健康履歴を把握することによりまして妊産婦の死亡率とか乳幼児の死亡率を改善させることができると、そういう点で大変優れた制度であると、そういうふうに認識をいたしております。  一方で、母子健康手帳は、もう委員が今もおっしゃいましたけれども、保健所施設の整備とか、あるいは保健医療従事者の育成とか、母親の識字率の改善などと相まってこそ効果が発揮されるものでありまして、社会的インフラが整備されるということが必要である、そういうお話でありました。  そういう観点から、我が国は、TICADWで表明いたしました千か所の保健医療施設改善、それから十万人の保健人材育成などの支援策を着実に実行していくように取り組んでおります。今御指摘のパイロットモデルにつきましても、JICAからも御説明がありましたとおり、既に西アフリカでの広域展開も視野に入れながらセネガルにおいて母子保健事業を実施しておりまして、こうした取組を引き続き行っていきたいと思っております。

○牧山ひろえ君

それでは、インフラ整備がある程度整っている、あるいは整いつつあるセネガルのような国で母子手帳を是非普及していただきたい。強いて言えば、来年の予算に母子手帳を入れていただきたいんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君)

 セネガルにおきましては、そういう母子健康手帳の配付も視野に入れつつ、今申し上げました母子健康事業などの取組をまず引き続き行っていきたいと、そういうふうに思っております。

○牧山ひろえ君

 乳幼児の死亡率をぐんと下げた実績のある母子手帳ですから、先ほどのお話でもパレスチナやインドネシアでそういった事例がありますので、いいことずくめの母子手帳ですから、迷いなく来年の予算に入れていただきたくお願い申し上げます。  もう一度お願いします。

○国務大臣(中曽根弘文君)

これの事業の重要性というものはもう委員からおっしゃるとおりですし、大変私も大事だと思っておりますので、できるだけ早期にそのようなことが実現できるように私どもも一生懸命取り組んでまいりたいと思います。

○牧山ひろえ君

ありがとうございます。  将来的にこの母子手帳の実効性が高まれば、人種や宗教が似ている隣国からも是非我が国でも欲しいという要望が、要請が起きるでしょうし、何よりも母子保健の向上にかかわるスタッフの移動が隣国間で活発になり、オン・ザ・ジョブ・トレーニングも活性化すると思うんです。もちろん、低い識字率の地域にはイラストを多用するとか、社会的なインフラの一部が未整備な地域においてはその実情に合わせた内容にするなど、母子健康手帳自体を柔軟にその地域に合った形でカスタマイズしていくことも一つの論点にはなろうと思います。  最後に、外務大臣にお伺いしますが、アフリカにおける母子保健の向上を目指すに当たって、母子手帳を活用できる制度づくりに関して、環境づくりに関して、もう一度外務省、JICAの今後の方向性を力強くお示しいただきたくお願い申し上げます。

○国務大臣(中曽根弘文君) 

我が国は、これまでもインドネシアなどのアジア諸国や、それからパレスチナで母子健康手帳の普及に取り組んでおりまして、その考えをアフリカにも広げるということは大変有意義だと、そういうふうに考えております。  先ほど申し上げましたとおり、これを配付するに当たりましては、いわゆるインフラといいますか、いろいろ保健所の整備等をしなければなりませんが、アフリカにおきましては、そういうような改善の支援をやりながら、母子保健の理念が浸透をして、そして母子手帳が活用されるような環境整備につながっていくことが望ましいと考えております。  そういう観点から、先ほど申し上げましたけど、我が国としては、TICADWで表明をいたしました千か所の保健医療施設の改善、そして十万人の保健人材育成などの支援策を着実にまずはこれを実行していくと、そういう考えで取り組んでまいりたいと思います。

○牧山ひろえ君

ありがとうございます。質問を終わります。